二酸化炭素を30%削減した石炭火力発電所

NHKだらしねぇな。

CO2を30%削減 火力発電所の試験施設完成

8月9日 18時32分
東日本大震災以降、火力発電への依存が高まり温室効果ガス対策が課題となる中、中国電力などが二酸化炭素の排出量を30%抑えられるとする石炭火力発電所の試験施設を、広島県大崎上島町に完成させました。
こんなニュースしか流せないメディアに成り下がったとは。

さて、二酸化炭素排出量を抑えた火力発電所が出来た。そう聞けば聞こえの良い話だし、これは喜ぶべきだろう。

だが、このニュースは色々とオカシイ。
この施設は、中国電力と電源開発がおよそ840億円をかけて共同で建設を進めていたもので、9日は、両社の関係者などおよそ50人が出席して発電所の完成を祝う式典が開かれました。
当然、NHKは何がおかしいのか分かっているハズだ。

火力発電所

こうした新しい技術への取り組みは大切だし、けちを付けたいとは思わないのだが、もうちょっとしっかりとした報道をしたらどうよ、NHK。
この石炭火力発電所は、石炭から取り出したガスを燃料に使うことで効率よく発電する仕組みで、4年後には、さらに、ガスから取り出した水素を燃料電池と組み合わせて発電する実証実験を行う計画です。
これが実現すると、これまでの石炭火力に比べ二酸化炭素の排出量を、30%程度削減することができるということです。
石炭火力発電所の技術が進んでいることは僕も承知しているが、このニュース、何から30%抑えたのか、が書かれていないのだ。え?従来のものと比べてだ?



では、従来の石炭火力発電所は、どうなのか?一般論から行こうじゃ無いか。
こちらは電気事業連合会の資料である。

pres_nucl_riyu_co2_inde01_l

一番左が石炭火力で、突出して二酸化炭素排出量が多い。もちろん、これも色々な条件付きで比較されるべきデータなのだろうが、石炭火力発電の財布サイクル二酸化炭素排出量が3割減ったところで、LNG火力発電に及ばないという。

もちろん、太陽光、風力、原子力などには遠く及ばない。まあ、燃焼を伴わないので当たり前と言えば当たり前なのではあるが、こうした知識のある人ならば、「何言ってるんだ」という話になる。
5.いまさら石炭、ありえない3つの理由

何と言ったって、排出されるCO2がとても多い

日本では、効率のいい石炭発電のことを「クリーン・コール」とよんだりします。ぜんそくなどの健康被害を引き起こす大気汚染物質(NOx、SOxなど)の約9割を除去することができるようになり、CO2排出も以前よりは少なくなったからです。
こちらの記事では扱き下ろしているが(注:コメント頂きましたが、この記事を読むにあたっては注意が必要です。情報を追記します)、石炭火力そのものは二酸化炭素を多量に吐き出す発電方法である。


で、冒頭のニュースで取り扱われているのは大崎発電所という石炭火力発電所の設備の事だと思う。具体的には酸素吹IGCC実証機のことだ。
いやいや、この手の情報は隠すなよ。
建設コストも、IGCCやCCSのような新しい技術をつかえば、石炭発電は今までよりももっと高くなっていきます。
実は石炭火力発電のメリットは、燃料の安さにある。クリーンというわけでは無いのである。

そして、元々は建設費も安かったのだが、IGCCともなると結構なお値段が。記事にも840億円かかったと書かれている。実証機で、だ。

北陸電、LNG火力建設費1100億円 出力42万キロワット

2013/5/22付
北陸電力は22日、富山新港火力発電所(富山県射水市)で2018年度に運転開始を計画している液化天然ガス(LNG)発電について、建設費が約1100億円になる見通しだと発表した。同社として初めてとなるLNG火力発電所の建設は東日本大震災前から計画しており、11年に公表している。今回、主要設備の概要を公表した。これまで40万キロワット級としていた発電出力は42.47万キロワットを計画するとした。
LNG火力発電ともなると、結構な設備コストがかかるのだが、それでも1100億円。42万Kwで1100億円かかると、結構高いと感じるけれど、大崎発電所のIGCC実証機は16万Kw程度で840億円である。実証機で色々くっついている可能性を考慮しても、ちょっと割高じゃ無いの?
 
結局、今回の実証機建設はまだ第1段階で、第3段階まで計画されている予算総額は明らかになっていない。が、二酸化炭素排出量はたいして減らないのに、発電量はショボイ。

石炭が易いから沢山買おう!という話をしていても、国内で掘れないので海外から買うしか無い。でも、シーレーンはヤバイよね、みたいな話になってくると、その存在意義はどのあたりにあるのだろうと悩んでしまう。そう、実は二酸化炭素排出量は石油火力と同等なのだけれど、LNGコンバインドサイクル発電と同等のSOx・NOx排出量で発電が実現出来るあたりがメリットなのである。
いや、もっと大きなメリットがある。実はIGCC方式は粉末化した石炭を燃やす関係で、従来よりも低品位の石炭で発電が可能となる。その辺りが、これだけのコストをかけて開発するメリットだと、そういう話なのだ。

メーカーのサイトなどを読むと、どうやら海外展開を狙っているみたいな話なんだけど、海外が何処までこのメリットを評価するかはまた別の話。



あと、大崎発電所って実は石炭火力発電所としては炉を2つ持っているところなのだが、1-1号機は加圧流動床複合発電(PFBC)方式という新方式を採用した核心的なヤツだった。1-2号機は計画があったけど1-1号機がトラブル続きだったので作るのを止めちゃった。

でも、発電効率が上がらず稼働率が悪かったので、2011年に廃止しているんだよね。そこが新たなプラント作っているってのが今回の話。それも新方式である。一応、空気吹きIGCCの方は実績があるのだけれど、より高効率だと言われる酸素吹きIGCCの実績は国内ではまだ無い。

そこも含めて報道しないと、報道機関としては失格なんじゃ無いの?メリットも狙いもなんか、報道されたそれからは読み取れないんだけど。公共放送なんでしょ?

追記
コメント頂いたが、引用した記事は若干問題があるようで、少し解説をしておきたい。

引用したサイトはこちら。

あるけむ氏の指摘する通り、かなり過激な主張をしている団体のサイトであり、その結論は僕も相容れない。原発も石炭火力も廃止するという方向性は、結論ありきで論理性に欠けると考えているからだ。


石炭火力発電はクリーンな発電では無いが、石炭という入手が比較的容易な燃料を使う点で有用である。特にIGCCの様な研究中ではあるけれども、低品位の石炭燃料でも使えると言う点では、メリットがある。

また、指摘のあった二酸化炭素の差の話が「燃料の炭素と水素の比」×「熱効率」という、ちょっとごまかしの入ったものである点も事実だ。
ちなみに、電気事業連合会が作ったグラフも似た発想のもので、上でも指摘しているが、燃焼を伴わない発電方法が有利になるのは当然なのだ。

指摘したかったのは、「二酸化炭素」を主軸にニュースを紹介する点がそもそもおかしいという話である。

追記2

さて、ご指摘頂いているサイトの話にも、少し言及しておきたい。

僕は研究者では無いので、この発表内容の真実性が何処まで、と言うところを評価出来るほどの知識は無いが、「超臨界CO2タービン」の技術に関する理屈はそれほど難しくない。

ただ、IGCCは上で引用した記事にもある様に蒸気タービンとガスタービンの両方を使う発電方法である。

 

最初にIGCCの方に触れておこう。

従来の発電所は、ほぼ蒸気タービンだけで運用されてきている。

ところが、ガスタービンを用いた方が効率が高く、発電効率を高めようとするとコレを用いるのが有用だ。何故ならば、蒸気タービンはランキンサイクルと呼ばれる液相と気相を行き来する熱機関であり、ガスタービンは気相だけを用いる熱機関である。だから、相転移をするにあたって多大なエネルギーを必要とする点を考慮すれば、ガスタービンの方がロスの少ない発電を実現出来る可能性が高い。

 

誤解を恐れずに話を単純化すると、ガスタービンは小型で高効率な発電が行える代わりに、高温になるためそれに耐えうる素材を必要とする点がネックである。蒸気タービンは効率は悪く、小型化に向かない(小型だと効率が極端に落ちる)ものの、ガスタービンよりも高価な素材を必要としない点がメリットとして挙げられる。

IGCCはそれを両方使う事で、効率の良い発電を実現しようという発想の火力発電だ。

図1図2


だが、コレは何も石炭火力に限定される話でもないようだね。

 

で、一方の超臨界CO2タービンなのだが、引用記事の説明は少々誤解を生じる気がする。僕の理解が追いついていれば、だが。

何故ならば、超臨界状態であれば、水であれ二酸化炭素であれ、気相と液相の両方の特徴を有することになる。

 

図3

 

一定条件を満たせば、図のように水であれ二酸化炭素であれ、液相と気相の間を行き来する訳だが、高温高圧下においてはコレが混じり合った「超臨界」という状態になる。

「超臨界」の環境下においては、流体は色々と面白い性質を発揮する。で、二酸化炭素はこの超臨界流体化する温度が31.1度、圧力が7.38Mpaと低く、扱いやすいことで注目を集めている。日本はこの分野での研究が進んでいて、世界でもトップレベルだ。

 

……IGCCの解説と、超臨界CO2サイクルの話をし出すと、纏まりきらないので、「何だか凄いけど、頑張ってるぜ」くらいの話で留め置いてほしい。

 

ちなみに、これらの計画はNEDOが一枚噛んでいるのだが、コレを事業仕分けしようとしたのが民主党である。村田蓮舫、ロクな仕事しねーな!





ランキングへの応援クリックよろしく!
にほんブログ村 ニュースブログ 時事ニュースへ

コメント

  1. あるけむ(R.K.M)@fwbc1965_32017年8月10日 10:18

    この記事については、カチンと来てます。

    >5.いまさら石炭、ありえない3つの理由

    この記事を根拠にするのは危険すぎます。非科学的と言ってもいいです。
    引用されたグラフのCO2の差は、「燃料の炭素と水素の比」×「熱効率」と言えます。
    燃料に炭素や水素の含まれない原子力・水力・地熱・太陽光・風力が、CO2排出量が少ないのは当たり前です。

    一方、この記事と作ったNPO「気候ネットワーク」は、反原発であり共産党を支援してます。
    つまり、「石炭火力をなくせ・原発もなくせ」なんですよね。
    その割には、中国の(日本よりCO2を排出する)石炭火力発電所には、文句を言ってないのです。
    この構図、反核団体と似ていると思われませんか?
    数字などに非常に疑問があります。石炭火力と原発を全廃して、日本の電力供給が持ちこたえられるとは考えられません。
    単純にコストだけで考えるのは非常に危険すぎると考えます。

    追伸)
    それよりも、こちらを取り上げないのは理解できません。
    「水蒸気の10倍のエネルギーを発電する「超臨界CO2タービン」 米研究者が開発」
    これは、閉回路タイプですね。開回路タイプは東芝などのグループが開発してます。

    返信削除
    返信
    1. あちゃぁ、ちょっと記事のチョイスが不味かったですね。そこは素直に認めたいと思います。

      ただ、石炭火力、ダメ、絶対!とか、そういう意図では無く、NHKはもうちょっときちんと仕事しろ、という趣旨でしたので、ご容赦ください。

      ご指摘頂いた点が、追記である程度纏まっていれば良いのですが、これがなかなか……。

      ご意見ありがとうございます。

      削除
  2. あんのー……エネルギー問題って難しいですね。
    例の木霊様に検証いただいた英仏のガソリン車ですが、仰られた事を頼りにググると色々でてくる。
    政治絡みで。あ、原油枯渇じゃ無さそう…てかそんなに単純じゃないなと思いました。
    報道もこれですからね。
    エネルギーの話は魑魅魍魎ですね。

    返信削除
  3. つまるところタービン燃焼効率(燃費)が高まれば同じ発電量を発生させるのに必要な石炭量が減る=それまで発生していた二酸化炭素量も減少するって事なんでしょう。
    でも車ならいざ知らず事発電量は過不足無く求められる為結構過剰気味な発電をする以上結局相応に石炭を燃焼すり羽目になるんじゃないでしょうか。
    話は変わりますが今回新たに公開された三菱重工技報に一連の超高温タービン技術についての記載があります。日本の発電タービン技術を御覧になってはいかがでしょう。

    返信削除
    返信
    1. 超高温タービンの技術に関しては色々調べさせて貰いました。
      その昔、セラミックスの加工絡みで三菱さんにお世話になった事がありまして、そういう意味でも素直に嬉しいニュースでした。

      日本の技術の進歩を感じる一方で、技術革新に必要な資金を回しづらくなっている現状を考えるとなかなか複雑な気持ちになります。

      この記事では四の五の言っていますが、発電効率が上がることは素直に歓迎したいんですけどね。

      削除

コメントを投稿

お気軽にコメントを!ハンドルネームは面倒でもお願いします。